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制作に至るまで
きっかけ
そもそもこのマニュアルが生まれたのは、ほんの偶然からである。1995年の暮に遡り、筆者は友人であるハリウッドの映画プロデューサー、マックス桐島より相談を受けた。CBSスタジオ・センターと交渉し、インターネットへ映画情報を流すウェブサイトの開設が決まったという。しかし、彼は物書きでもなければ、特別コンピュータに詳しいわけでもなく、企画を実行する上でスーパーバイザーになってくれと持ちかけてきたのだ。
相談された筆者とて物書きでこそあれ、コンピュータなら並の人間よりやや詳しい程度の知識しかない。だが、好きな分野であることとCBSスタジオ・センターのデザイナーが自由に使えることは魅力であった。結局、制作へいっさいタッチしないという条件付で引き受けるのだが、その理由は自分自身ののめり込む性格を恐れたからである。
ドラムマシンやシンセサイザーのプログラミングからグラフィックやワープロに至るまで、長年コンピュータを人生の伴侶としてきた結果、もしウェブサイトのデザインへ係われば、それが今後の人生を左右するほどの底なし沼となるのは間違いなかった。楽器や物を書く道具以外、せいぜいDOSコマンドで遊ぶ程度が無難と考え、どのようなレベルであれコンピュータ言語を使ってプログラミングをすることだけは避けたい。
このような確固たる姿勢で参加したウェブサイト「ハリウッド最前線」ながら、CBSスタジオ・センターにあるコンピュータの1台へ日本語版Windowsをインストールする必要があり、それだけは筆者が引き受け、いよいよ年明けとともにスタートする。また、画像のデザインへは興味があり、マックスのバナーは筆者のデザインが採用された。しかし、さすがのプロフェッショナルたちも、その時点では日本語のハイパーテキストがお手上げ、文書をスキャンした画像で誤魔化す。
いくらド素人の筆者とてハイパーテキストを使わなくては意味がないぐらいの理解はあり、じっさい新装開店のページを開いてみればダウンロードにやたら時間がかかる。同じような短い文章の日本語ページと比べ、天と地の差だ。そこでまず、それらのページをハードディスクへ保存し、Windowsのメモ帳で中身を覗いてみた。「タグ」という言葉すら知らない筆者だが、なんとなく意味はわかる。
そこで、ためしに「ハリウッド最前線」の日本語文を画像から文字へ置き換え、ブラウザで見てみた。すると、予想が当たった部分は、しっかりと反映されている。そして何度か試行錯誤の末、ちゃんと思いどおりのページが出来上がったではないか!・・・・・・これが原点なのだ。
はじまり
ともあれ、3日間でハイパーテキストの基本的な構造はなんとか把握すると同時、作ったページがインターネットに乗った。もっとも、ウェブマスターへ至るまでの道は長い。ただ、CBSスタジオ・センターのウェブマスター(デザイナー)たちから見ると、インターネットに乗った時点で自分たちの仲間と映ったらしく、問題があると聞いてくる。
英語のブラウザで見れば、日本語の文章はウィンドウの右端で改行しない。それさえ知らず彼らとパニックに陥りながら、結局、こうした問題を筆者が解決するしかなかった。あるいは、Windowsのアニメーション・ポインタなどで馴染みがある動画をgifアニメへ応用すると、作り方を聞いてくる。その相手はコンピュータ言語を駆使し、複雑なプログラムを軽々と書く人間なのだ。
そして2〜3ケ月経つ頃、いつの間にやら筆者がCBSスタジオ・センターでは「ハリウッド最前線」の担当にされていた。その間、インターネット上でハイパーテキストを研究しながら、自分用のマニュアルが必要だと感じたところから、この「ハイパーテキスト・マニュアル」は生まれている。以来、「ハリウッド最前線」とともに歩んできたが、基礎はほとんどが1996年にまとめたものだ。したがって、アップデイトの追いつかない時代遅れの部分は、ご容赦いただきたい!
なぜ公開へ至ったか?
もともと自分専用のマニュアルとしてまとめ、1996年以来、未公開のまま「ハリウッド最前線」と表裏一体をなしながら膨らんできた内容が、いったいどこまで正しいのか自分では判断する基準すらなく、いつも間にやら現在の形が整ってきた。ただ、平行して「ハリウッド最前線」へ「Windowsの裏技集」と題したコラムを2ケ月ごと(開設当初は4ケ月ごと)のペースで連載するうち、このマニュアルがあれば細かい説明は代用できたのに・・・・・・と、思うことも多くなる。
また、連載を始めて以来、読者からの技術的な質問が増え、その多くはマニュアルへ含まれる内容であった。結局、責任を持てる内容かどうかというより、このマニュアルの場合、筆者同様、試行錯誤をする読者に何らかのヒントが与えられたなら、それだけでじゅうぶんかもしれない。どうせ日進月歩のコンピュータ業界は、もとよりメーカーや専門家ですら時として頼れないのが現状だ。
そこへ、「Microsoft」や「Sony」系列をはじめとする様々なウェブサイトから「ハリウッド最前線」を推薦していただくようになって、今度はインターネットで学んだハイパーテキストのノウハウを自分独自の発想で活かそうと考え始めた。たとえば、「META」タグを応用してインターネット上のスライドショーを考案した「聖林写真館」が、その1つである。誰もやっていないので技術的な自信はまったくなかったが、掲載数ケ月後、この類では最先端を行く「プレイボーイ・マガジン」サイトが、なんとポートフォリオの全ページへ同じアイデアを採用した時は驚いた。
そういったパターンが続くうち、マニュアルの中で自分独自に考案したアイデアは増えてゆく・・・・・・以上いくつかの理由が重なり、とりあえず公開へ踏み切ったものの、まだまだ工事中のページは多い。加えて、サイト内でファイル名が変更されながら、リンクを更新し忘れている部分なども少なくないと思う。もし何かお気づきの時は、ご指摘いただけるとありがたいのだが!?